「アメリカ・メディア・ウォーズ」大治朋子著

公開日: 更新日:

■調査報道専門のNPO団体も登場

 アメリカはやはりメディア大国。もともとインターネットは米ペンタゴンの実験から始まったことは有名。また皮肉にもインターネットにおびやかされる新聞業界でも、同じく報道界の世界標準はアメリカが実践してきたのだ。

 著者は毎日新聞の米特派員として対テロ戦争などを精力的に取材。さらに、ネット時代の米メディア界の長期取材で、すぐれた報道に授けられる「ボーン・上田賞」を受賞した。本書によれば、厳しいのはネットに食われた新聞各社の経営環境。現場の記者は減らされ、カメラマンは多くがクビ。ボストン・グローブなど伝統ある新聞が海外支局を総閉鎖して外信は通信社にまかせ、地方紙に徹するなど必死に生き残りを模索している。いま米国では大新聞ほど痛手が大きいのだ。

 またローカルニュースも地域企業からの支援によるNPO形式に変わりつつある。懸念されるのは、地道な長期取材でウォーターゲート事件のような腐敗などを追及する調査報道の衰退。しかし、これもNPO方式で優秀な記者だけを集めた報道組織「プロパブリカ」(公共のために、の意)などが、既存メディアとも連携しながら成功を収めつつあるという。楽観的ではないが、志はいまなお高い。それが米ジャーナリズムなのだろう。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ