大人の男旅本特集
「ニッポン旅みやげ」池内紀著
旅先で出くわす「ヘンなもの」を手掛かりに、考えたり想像したりしていると、見方なり考え方なりを転換するきっかけになる。「そんな知的スリルが楽しくて」旅をしているという著者によるエッセー集。
表通りから一つ裏手に入れば「小町娘」が待っているはずと、旅先では「一つめ小町」と名付けたルールにのっとり町を歩く。そうして見つけた、2人の人物があたかも「ギッコンバッタン」しているかのようにあられもない姿で重なり合った不思議な石膏像がある長野県の軽井沢町の喫茶店をはじめ、石川県金沢市の古い病院の今となっては忌まわしいナチスのトレードマーク鉤十字が堂々とデザインされたタイル張りの玄関の床や、そして宮城県白石市の神社の裏手に忘れ去られたように放置された「据置郵便貯金碑」と刻印された謎の石碑などが目に飛び込んでくる。
各地の路上を徘徊しながら見つけた景色や建物からにじみ出る「オトナの味わい」をつづる。
(青土社 1800円+税)