一般人に人命救助の義務はあるか?映画で法律を学ぶ本

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 日々の生活の中で法律を意識する場面はそう多くはないが、ご近所付き合いから社会問題に至るまで、法律はあらゆる場面に関わってくる。とはいえ、法律を学ぶことは素人にとってハードルが高い。

 そこでお薦めしたいのが、野田進・松井茂記編「新・シネマで法学」(有斐閣 2500円+税)。古今東西の映画を題材に、物語の中の何げない法律的要素を分かりやすく解説している。

 1994年に米仏共同で製作された「レオン」。殺し屋のレオン(ジャン・レノ)が、一家惨殺事件の生き残りである少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)をかくまい、犯人から守る物語である。レオンが赤の他人のマチルダを助けるという行為から学べるのが、“人命救助の義務と責任”だ。

 一般人に、命の危機にある者を助ける法律上の義務があるかどうかは、国によって考え方が異なる。フランスやドイツでは人命救助を求められ、これに応じた段階で、委任ないし委任類似の契約成立が認められる。つまり、人命救助義務を法律上肯定しているのだ。

 一方、アメリカやイギリスは、原則として人命救助を法的義務と考えない。他人の権利を侵害しない限り、他人のために行動することを義務付けないという考えによるものだ。

 日本では、火災現場など若干の場合を除き、人命救助ないしそれに協力する法律上の義務は、一般人にはないという見解だ。むやみに他人の生活領域に関与することは望ましくないという考えが根付いているためだという。ただし、この考えには社会の連帯思想に反する結果をもたらす恐れもある。そのため、救助者の行為を不法行為でないと認め、救助者から被救助者に対し救助で被った費用の請求を認める法律もある。

 差別と平等を学ぶ「E.T.」、裁判および裁判外紛争解決手続きを知ることができる「エリン・ブロコビッチ」など、映画の力で法律を身近に感じることができる異色の法律入門書だ。



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