「ブルーに生まれついて」 マイルスとベイカー 2人の天才ジャズマンの伝記映画

公開日: 更新日:

 なんだか奇妙なほど駆け足で過ぎた今年の暮れ、ジャズマンを主人公に描く話題の映画がつづけて公開される。現在、Bunkamuraル・シネマほかで全国公開中の「ブルーに生まれついて」と今月23日封切りの「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5年間」だ。前者はウエストコースト・ジャズの天才児と騒がれながらドラッグで自滅したチェット・ベイカーの伝記。後者も天才トランペッターの代表格マイルスの実話ものだ。

 意図したわけでもないのにこの2作、妙に共通点がある。第1はあまり本人に似てない俳優が実在のトランペッターを演じていること。チェット役のイーサン・ホークもそうだが、マイルスを演じるドン・チードルは般若顔のマイルスとは対照的な下がり眉の泣きっ面。なのに芝居の力で見せてしまう。

 第2は両作ともかなり本格的に演奏を聴かせること。演奏場面は役者たちの“形態模写”みたいなものだが、目くじら立てる気にならないのは、ジャズ好きとして劇中音に思わず耳を傾けてしまうからだ。暗がりが似合う点でジャズと映画は案外近いのかもしれない。

 それにしても、もとは大衆音楽だったジャズがいつしか高級なイメージに化けてしまった現代をどう考えるのか。その時代の移ろいを巧みに論じたのがアメリカの歴史学者ローレンス・W・レヴィーン「ハイブラウ/ロウブラウ」(慶應義塾大学出版会 3200円+税)である。昔はクラシック音楽家が見向きもしなかったジャズが、いまや知的で都会的といわれるわけはなにか。機微に触れる筆致で、序文の最初から引き込まれる。
〈生井英考〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  5. 5

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  1. 6

    元横綱白鵬が突然告白「皇帝の末裔」に角界一同“苦笑”のワケ…《本当だったらとっくに吹聴しています》

  2. 7

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  3. 8

    阿部巨人の貧打解消策はやっぱり助っ人補強…“ヤングジャイアンツと心中”の覚悟なし

  4. 9

    山本舞香は“ヤンキー”より“令嬢”がハマる?「波うららかに、めおと日和」《ふかふみコンビ》で人気急上昇

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも