「起死回生の読書!」澤野雅樹著
学生など、外的な動機づけがある世代以外は、ほぼ全世代にわたってまったく本を読まない世代が増加しているが、本書では興味深いエピソードが紹介されている。古生物学者リチャード・フォーティの書いた「生命40億年全史」の読者の一人が、東京の湾岸地区の高架下に住むホームレスだということが、読者カードから判明した。空き缶拾いで貯めた金で購入したという。この本に繰り広げられる悠久の時の前では人間の生涯などつかの間の閃光のようなものだが、高架下の住人は「知る」ことを通して、人の世の狭小な価値の世界から脱することができたのかもしれない。
本を読む意味について思索する刺激的な一冊。(言視舎 1700円+税)