老人になったらみんな痛いんだ

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「老人一年生 老いるとはどういうことか」副島隆彦著/幻冬舎新書/2017年5月

 評者は最近、蜂窩織炎(いわゆる蜂の巣病)という免疫低下が原因で起きる感染症に罹り、両脚のふくらはぎが1・5倍くらいに腫れ、熱を持った。抗生剤の大量投与で腫れは引いたが、何とも形容しがたいだるさが残っている。現在、57歳の評者も老化が迫っていると実感した。

 ユニークな国際情勢分析で有名な副島隆彦氏は、<私は、5つの老人病、即ち、1.「痛風」、2.「前立腺肥大症」、3.「高血圧(からの頭痛)」、4.「慢性気管支炎」、5.「腰痛、頸痛」の5つの老人病を抱えて、それがまとめて噴出した2016年の初めに、痛みで苦しい日々を送った。それで、「老人になったらみんな痛いんだ」ということに気づいた。50代までは他の人たちと同じく、このことに気づかなかった。>と記す。

 この記述を読んで、評者も近未来に襲ってくるであろう痛みに対して覚悟しなくてはならないと痛感した。

 副島氏は、いつまでも若くありたいという風潮に対して批判的だ。
<老人はみんな人生の達人だ。だから、若い人たちが自分の痛さをどうせ分かってくれないということを、よくよく分かっている。自分も若くて元気だった頃は、老人のことを理解しなかった、と分かっている。こんな馬鹿げた当たり前のことを、なぜかこれまで誰も言わない、書かない。だから、私が初めて言う(書く)。>との副島氏の指摘はその通りと思う。

 人間が老化するのは、動物としての宿命だ。そして、老化の後には死がある。評者は、キリスト教神学の専門家でもあるので、死については常に意識しているが、その過程で起きる老化についての認識が不十分であった。

 評者の父は2000年にがんで死んだが、最期は痛みで非常に苦しんだ。母や医師、看護師を罵倒するのを見て、評者は驚愕した。主治医を訪ね「すみませんでした」と謝った。主治医は「痛みは人格を変えます。私たちは慣れているから大丈夫です。お父さんが苦しんでいることをよく理解してあげてください」と言われた。自分自身もそう遠くない将来に痛みと直面することを覚悟しなくてはならない。 ★★★(選者・佐藤優)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

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