「江戸川乱歩と横溝正史」中川右介著

公開日: 更新日:

 1922年9月、神戸で行われた馬場孤蝶の「探偵小説の話」と題された講演会場に偶然居合わせたのが、江戸川乱歩と横溝正史だ。2人が実際に会うのはその4年後だが、それ以前に馬場の探偵小説論を共に聞いていたというこのエピソードから本書は始まる。

 共に日本の探偵小説史上に大きな足跡を残した乱歩と横溝だが、著者は2人を太陽と月にたとえる。

「乱歩が旺盛に書いている間、横溝は書かない。横溝が旺盛に書いていると、乱歩は沈黙する。天に太陽と月の両方が見える時間が短いのと同様に、2人が共に探偵小説を書いている時期は、ごくごく短い」

 同時に、片方が作家として執筆しているときは、もう一方が編集者として支えるという、実に絶妙な関係でもあった。本書は、そうした2人の関係を時系列で追いながら、個々の評伝とはまた違ったそれぞれの作家像を浮き彫りにする。

 また、博文館、講談社などの出版界の動向も重ね合わせることで、探偵小説というジャンルを立体的にとらえているのも秀逸。(集英社 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐野勇斗は書道六段で英語も堪能 愛知県立岡崎西高校から明治学院大英文学科へ

  2. 2

    これが日本の「中流」サラリーマン転落の軌跡 年金の「繰り上げ受給」を選ぶのは、お金と仕事がない人

  3. 3

    ドジャース大谷翔平「サイ・ヤング賞&首位打者」同時授賞に現実味 4年連続5度目のMVPは既定路線

  4. 4

    見上愛は桐朋女子中高から日芸演劇学科に進んで演出家を志す 大学同級生・河合優実との本当の関係

  5. 5

    山口組、稲川会、住吉会…最高幹部3者の極秘会食で何が話し合われたのか

  1. 6

    嵐が去った後に340万人のファンが向かう先…Snow Man、M!LKに次いで有力“不祥事グループ”「ACEes」に募る不安

  2. 7

    ミスチル、銀杏BOYZ、T-BOLANの直前ライブ中止〈はやく判断できないのか〉アーティストの決断が遅れる背景とジレンマ

  3. 8

    「Aぇ!group」草間リチャード敬太は事件から“ほぼ復活” 大阪学院大で学んだ苦労人の前途

  4. 9

    巨人橋上監督代行が坂本勇人に肩入れする事情…出場メンバーとオーダーに“唯一”口を出した

  5. 10

    高市首相ハレンチ答弁の醜悪! 中傷動画疑惑めぐる「秘書音声」追及に「文春の有料会員イヤ」と屁理屈