「断るならバラすよ」マッチした男の“正体”に愕然。ときめきが地獄に変わった残酷な瞬間
【不倫ドキュメント・ファイル~なぜ禁断の恋をするのか?】
世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚外恋愛経験者だという。SNSやマッチングアプリが普及し、不倫のハードルは下がる一方。しかし、その裏にある人間の欲望と自己演出には注意が必要だ。
ワイドショーの定番、それは芸能人の不倫騒動。謝罪会見に活動休止──愛に溺れた代償はあまりにも重い。
世間が「不倫=絶対悪」と決めつけるなかで、それでも、人はなぜその扉を開けてしまうのか。禁じられた恋に身を投じる不倫の背景をCA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持ち、数々の人間模様を見てきた筆者が読み解いていきたい。
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マチアプから地獄に落ちた32歳女性
今や出会いのメインといえば、マッチングアプリだろう。
好みのタイプ、年齢、職業、年収──条件を入力してタップすれば、一瞬で理想の相手とつながる時代だ。
恋人探しから婚活、さらには既婚者同士の逢瀬まで。アプリは出会いの幅を無限に広げた。
だが、その便利さの裏で思いがけない地獄に落ちていく女性も少なくない。
取材に応じてくれたのは、瑠奈さん(32歳主婦・子どもあり)。柔らかな物腰の女性だが、語る声は震えていた。
ほんの出来心で既婚者限定マチアプに登録
「22歳で息子を産んでから、主人とはすっかりレスになってしまったんです。それどころか、夫婦の会話もなくなって。話すといえば息子の進路のことくらい…。主人は13歳年上でメガバンク勤務。
何かというと『家族のために働いてるんだ。家のことは義母さんと協力してやってくれ』の一点張り。近所に住む姑が、合鍵で勝手にマンションに入ってくるのもストレスでした。
幸い、息子は主人に似て成績優秀、おまけに品行方正とあって手がかかりませんが、私は心をすり減らすばかり。
そんな時に、広告で見つけたんです。『既婚者限定マッチングサイト・Tクラブ』。ほんの出来心でした。夫婦関係の空白を埋めたい…女として見てほしいなって」
久しぶりのときめきは長続きせず
出会ったのは、伸二さん(29歳・IT関係/子供なし)。彼は夫とは真逆のタイプだった。
「シンプルなシャツにデニム姿で、自由な雰囲気。渋谷の会社には週に2〜3回出勤するだけで、あとはリモートだそうです。学生時代に20か国を旅したバックパッカーで、話が面白くて、頭の回転も速い。最初に会ったとき、『瑠奈さんて、年上なのに可愛いね』って笑って、頭をポンって…その瞬間、何かが弾けました」
夫からはもう何年も触れられていなかった。そんな瑠奈さんにとって、彼との逢瀬は久しぶりのときめきだった。
「行為中もすごく情熱的で、『彼は世界中の女性を見てきたんだろうな』と思うと切なくて…。気づけば私が追う側になっていました。サイト内のチャットは毎日くれたけれど、次第に減っていって…。『逢いたいけれど、仕事が忙しい』って言い訳ばかり」
やがて、4カ月目にして初めて一週間も連絡が途絶えた。
「1時間でもいいから会いたい」と伝えても、「今週は地方で仕事」とそっけない。
「分散」提案に、心が揺らいで
「泣く泣くアプリ内にある『女性限定の相談ルーム』に投稿したんです。『彼から連絡が減ってつらい。どうすればいいのか分からない』って。すると、すぐにたくさんの返信が来ました」
――主さん、私も同じ。彼ともう2カ月会えてない。
――都合のいい女って分かってるのに、彼を嫌いになれない自分が嫌。
――婚外恋愛なんて結局、男の遊び相手探し。もう誰にも期待しません。
そんな中、ひとつだけ異質な返信があった。
――主さん、いっそ『分散』したら? 私は一人に執着して苦しかったから、今は他の人ともデートしています。
分散――それは一人の男性に絞らず、複数の相手に愛情や時間を分けて付き合うという意味だった。
「最初は驚きました。でも、正直、少し楽になった気がしたんです。『自分もそうしてみようかな』って。少しでも気を紛らわせたくて」
新たにマッチした相手の素性に驚愕
瑠奈さんは新たにマッチした男性・浩平さん(40歳・金融関係/子供あり)と韓流映画の話題で盛り上がり、顔写真を交換した。
「精悍で日焼けしたイケオジ系。年下の伸二くんとは違う魅力がありました。初めての写真交換にドキドキしていたら、彼から突然――『もしかして、苗字は林って言いません?』って。
え? と思っていたら、『一度、会社の懇親会でお会いしましたよね。僕、林先輩の部下の浩平です』って言われたんです」
夫の職場の後輩――その瞬間、頭が真っ白になった。
LINEを教えた途端電話が…
「手が震えて、指先が冷たくなって…。すぐに『この件はなかったことにしてください』と返したんです。でも彼は、『なかったことにはできませんよ。林先輩の奥さん、前から素敵だと思ってました。一度、食事でも行きましょう』って。ありえないと思いました」
拒否しても、彼は強引だった。
――断ったら、このチャットと顔写真を先輩に見せますよ。そうだ、LINEのIDを教えてください。サイト内では話しにくいな。
「脅しでした。もう怖くて…サイト内には運営のパトロールがあるけど、LINEに移ったら誰も助けてくれない。
でも、『LINEでゆっくり話したい』と言われて、仕方なくIDを教えたら、すぐに電話が来て。
浩平さんは、『ははっ、これも縁ですよ』『息子さん、E小学校でしたよね? さすが優秀だ』って。恐ろしくて、泣きながら『やめてください』って叫びました」
癒しの存在か、底なしの沼か
しかし、浩平さんは譲らない。
――食事くらい付き合ってくれてもいいじゃないですか。
――断るなら、証拠を送りますよ。
「もう逃げられないと思いました。夫に知られたら家庭が壊れる。『食事だけなら』と答えるしかなかった。再来週、会う約束をしてしまいました。でも、お酒が入ったらどうなるか分からない。本当に怖い。全部、自分がまいた種なのに…あの時の自分が恨めしい」
瑠奈さんは、肩を震わせながら唇を噛んだ。
夫婦関係の空白を埋めようと、ほんの軽い気持ちで始めた既婚者マチアプ。そこには、非日常の甘いときめきと同時に、底なしの沼が潜んでいた。
優しい言葉をかける男もいれば、弱みに付け込む男もいる。便利で刺激的なツールは、癒やしと興奮を与えてくれる一方で、心を蝕み、人生を狂わせる毒にもなる。
いま、瑠奈さんは激しく動揺し、深い闇の中にいる――。
(蒼井凜花/作家・コラムニスト)