「混血列島論」金子遊著

公開日: 更新日:

 日本は単一民族であるという「単一民族神話」に対しては、これまで事あるごとに批判がなされてきたが、近年の日本礼賛ブームもあって、この神話はいまだに根強く生き残っている。しかし、ユーラシア大陸と太平洋上の島々の間に位置する日本列島は、古来人々が行き交う場所であり、DNA解析によれば、主流日本人は中国東北部、シベリア、中央アジアなどの種族が混血したものだと判明している。

 本書は、文献とフィールドワークの両面から、日本列島(ヤポネシア)の混血であるがゆえの多様な文化の豊穣さを掘り起こしている。

 著者の「混血列島」を巡る旅は樺太の先住民ウィルタ、台湾のタイヤル族という旧植民地の少数民族から始まり、北海道・二風谷のアイヌの映像を記録した医師・人類学者のマンロー、明治初期のアイヌの生活を紹介した女性旅行家イザベラ・バードの足跡をたどり、先島諸島の神事の意味を探る。さまざまな文化の混交を軸にした新しい民俗学の萌芽がここにある。

(フィルムアート社 3000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁