「雷雲の龍」吉川永青著
上総飯野藩剣術指南役の森要蔵は、麻布永坂にある岡仁庵の屋敷に間借りして北辰一刀流の道場を開いているが、国家老の樋口盛秀に頼まれて、道場を離れて藩に詰めることになった。長州藩が異国船を大筒で攻撃するなどの不穏な動きがあり、関東でも尊攘派が騒動を起こすことを警戒しての対応だった。
徳川家茂が急死し、15代将軍となった一橋慶喜は大政を奉還するが、薩長と公家の岩倉具視が手を結び、倒幕を企てる。徳川譜代の飯野藩藩主保科正益は徳川に累が及ぶのを避けるため若年寄を辞した上で、要蔵に会津の援軍を命じる。
講談社創業者・野間清治の祖父で、「龍の雷雲を纏うが如し」と評された剣豪、森要蔵の生涯を描く。
(講談社 1500円+税)