「戻る男」山本甲士著
スランプ中の作家・新居に不審な手紙が届く。八木と名乗る差出人からの手紙は、彼が所属する研究機関が開発に成功したタイムスリップを体験してみないかという勧誘だった。
新手の詐欺を疑う新居だが、悩んだ末、誘いに乗ることに。目隠しをされ連れていかれた場所で、新居は希望通り中学時代にさかのぼり、心の傷となっていたある出来事をやり直す。代金は50万円だった。何とかその原理を探ろうと再度応募した新居は、大学時代に戻る。数日後、今度は八木から新居自身も忘れていた小学時代に目撃した事故を未然に防ぐために、過去に戻るよう提案される。
忘れてしまいたい痛恨の過去をやり直せたら――誰もが抱く願望をかなえた主人公を描くミステリアスなタイムスリップ小説。
(小学館 650円+税)