ポピュリズムの可能性

公開日: 更新日:

「候補者」ジェレミー・コービン アレックス・ナンズ著 藤澤みどりほか訳

 憎悪犯罪などをあおる危険な政治思想といわれるポピュリズム。しかし、全く違う顔があるのだ。



 テリーザ・メイ英首相の前に立ちはだかる労働党党首J・コービン。白髪白ヒゲで外見から左派らしい彼は、30年以上も党内傍流の「バックベンチャー」(後方席のヒラ議員)に過ぎなかった。労働党はブレア党首(首相)時代に新自由主義に右旋回し、以来、“サッチャー主義の政党”に堕してしまったのだ。しかし、あまりの格差社会に音を上げた人々は泡沫とみられていたコービンの支持をじわじわと押し上げ、2015年に奇跡の党首選勝利。翌年の党内クーデターもはね返し、17年6月には圧倒的不利の下馬評を覆し、メイ政権の与党保守党を過半数割れに追い込んだ。

 SNSに詳しい新世代のジャーナリストで活動家の著者はコービンと党内左派の動きを丁寧に取材。派手な政界スキャンダルばかり追う主流派メディアが見落とす日陰の政治勢力の存在を明らかにした。まさに「民衆本位」というポピュリズムの本義を地で行くような本だ。

(岩波書店 3700円+税)

「黄色いベスト運動」ele―king臨時増刊号

 道路工事などの作業員が羽織るビニール製の黄色いベスト。あれをユニホームにした群衆が「ガソリン税増税反対」を契機に政府への異議申し立てを叫び、昨年11月から仏全土で週末ごとにデモを展開している。

 マクロン政権は警察とマスコミを動員して「暴徒」と印象操作しようとしているが、田舎からバスや列車でやってくるオジサン、オバサンたちの運動こそ政治地図を塗り替える新しい民衆運動だといわれる。

 本書は音楽カルチャー雑誌が評論家や在仏の日本人ライターらを動員した「黄色いベスト」緊急取材版。現在進行中の話題ゆえ短い記事が多いのは少々物足りないが、大手メディアが伝えない情報や見方が豊富。

(Pヴァイン 1660円+税)


「左派ポピュリズムのために」シャンタル・ムフ著 山本圭、塩田潤訳

 著者は前著「民主主義の逆説」で「闘技民主主義」という概念を打ち出したベルギー出身の左派の代表的な政治哲学者。グラムシの影響が強いといえばその立場がわかるだろう。

 本書では前著の論点が不徹底だったと率直に認め、「中道」をめざす社会―民主主義は破綻したと宣言。そこで注目するのが、これまでは無知な大衆扇動とみられてきたポピュリズム。右派と左派の合意点を経済的利益への妥協に求めることをやめ、対決辞さずの方針に転換すべきだとはっきりうたい上げている。

 仏「黄色いベスト運動」、英「EU離脱論争」、米「民主党左傾化」などを読み解くカギになりそうだ。

(明石書店 2400円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “年の差婚”で武田真治は祝福され城島茂は…イマイチな理由

  2. 2

    コロナ利用の自分ファースト “女帝”圧勝の内幕と今後<前>

  3. 3

    緊急寄稿・石井妙子 小池再選を生んだメディアの忖度気質

  4. 4

    年金8兆円消えた…姑息GPIFが発表「今後失う」衝撃の数字

  5. 5

    西村まさ彦が“乳がん離婚宣告”報道に「ハメられた」と困惑

  6. PR
    在宅ワークにSOYJOYを激推ししたい理由

    在宅ワークにSOYJOYを激推ししたい理由

  7. 6

    “シースルー看護師”が懲戒処分撤回後にモデルに抜擢され…

  8. 7

    ヤクザ役で活躍「ピラニア軍団」故・志賀勝さんの強面伝説

  9. 8

    テラハ問題で木村花さん母が告発 フジ“ヤラセ教唆”の罪深さ

  10. 9

    また2ショットなし 綾瀬はるか“結婚報道”で私生活の深い謎

  11. 10

    政財界の大物たちが役員を務める「受け入れ団体」の怪しさ

もっと見る