「丁庄の夢」閻連科著 谷川毅訳
河南省の寒村、丁庄は静まり返っていた。村の人びとは10年前、売血で生計を立てていたのだが、その後、熱病が蔓延(まんえん)し、2年足らずで40人も死んだ。その熱病はエイズだった。
「私」は12歳のとき、エイズではなく毒の入ったトマトを食べて死んだ。父が村の売血王だったからだ。祖父は学校で学んだことがあり、「先生」と呼ばれていた。残された孫を守るために、村の一軒一軒を、毒など盛らないように頼んで回ろうと考えたが、今度は叔父が熱病にかかった。それは叔父が父の代わりに血を売ったことの報いだと祖父にはわかった。
やがて、県の上層部から祖父に、熱病の患者を集めて学校に住まわせるようにという指示があった。
エイズを核に繰り広げられる壮大な物語。
(河出書房新社 3200円+税)