「だから殺せなかった」一本木透著

公開日: 更新日:

 全国紙の社会部記者・一本木は、連載企画でかつて支局勤務時代に記事にした汚職事件の顛末(てんまつ)を告白する。それは一本木の記事によって、事件関係者は自ら命を絶ち、結婚を約束した恋人まで失ってしまった苦い体験だった。

 数日後、記事を読んだという人物から一本木宛てに手紙が届く。「ワクチン」と名乗る手紙の主は、世間を騒がす連続通り魔事件の犯人だった。手紙には犯人しか知らない情報も添えられていた。

 ワクチンは、手紙で記者なら説諭で自分を改心させてみろと一本木を挑発。そして、今後、定期的に送る声明文を1面に掲載し、翌日に一本木の反論を載せるよう要求。ルールが守られなければ、犠牲者が増えていくと警告する。

 新人とは思えぬ筆致で読者を物語世界に引き込む第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。

(東京創元社 792円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発