「記憶のほとり」ミーヨン著

公開日: 更新日:

「わたし」は高校2年のときの仲間7人で洛東江の河口に旅行にきて、冬の曇り空を舞う白い鳥の群れを見ていた。

「あれは、なんの鳥!?」とわたしが叫ぶと、「カモメじゃない?」とヨンエかヘギョンが応えた。すると、なんともいえない懐かしさがこみあげてきた。

 カモメという言葉の響きがいとおしい幼なじみの名前のようにふんわりと心に染みた。

 その日の宿は電灯もなく、アルコールランプが頼りの暗い部屋だった。家主に借りたロウソクに火をともしたが、それが消えてしまうと闇が訪れた。

 何も見えない中で誰かの声を聞いた。ああ、彼女ってこんな声だったっけ……。

 記憶を手繰りながら清冽(せいれつ)な文体でつづる7つの物語。

(松柏社 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    全英V山下美夢有の「凱旋フィーバー」は望み薄…6年前の渋野日向子と決定的な違いとは?

  2. 2

    金足農・吉田大輝は「素質は兄・輝星以上」ともっぱらだが…スカウトが指摘する「気がかりな点」

  3. 3

    叡明(埼玉)中村監督「あくまで地元に特化したい。全国から選手を集めることは全く考えていません」

  4. 4

    中居正広氏に新事実報道!全否定した“性暴力”の中身…代理人弁護士は「出どころ不明」と一蹴

  5. 5

    東洋大姫路(兵庫)岡田監督「大学からは『3年で』と言われたけど、ナンボ何でも無理ですと」

  1. 6

    国民民主“激ヤバ”女性議員の選挙違反疑惑には党本部が関与か…ダンマリ玉木代表に真相究明はできるのか?

  2. 7

    清原和博さんの「思わぬ一言」で鼻の奥がジーン、泣きそうに。チーム内では“番長”とは別人だった

  3. 8

    嫌というほど味わった練習地獄と主力との待遇格差…俺の初キャンプは毎日がサバイバルだった

  4. 9

    例年の放送目前に「今年は27時間テレビないのか」の声が続々 2011年には中居正広氏に「女性に溺れる」との予言の因果

  5. 10

    巨人の正捕手争い完全決着へ…「岸田>甲斐」はデータでもハッキリ、阿部監督の起用法に変化も