「クロコダイル」トマ・マチュー著、リボアル堀井なみの、コザ・アリーン訳

公開日: 更新日:

 書名からワニの図鑑だと思ったら大間違い。副題に「ワニみたいに潜む日常のハラスメントと性差別、そしてその対処法」と掲げる本書は、男たちをワニに擬人化し、街中で日常的に繰り広げられている男性による性差別やハラスメントをコミック化した証言集なのだ。

 登場するエピソードは、すべて女性たちから寄せられた実体験。

 プールで泳いでいると突然目の前に現れる下半身を露出した「ワニ」。それだけでは終わらず、ワニは逃げる女性を更衣室にまで追いかけてくる。

 ほかにも、女性が尻軽女だと見下して「俺もやらせてよ」と執拗に迫ってくるカフェの店員ワニや、教え子に駅まで送ると言いながら、自宅までついてくる大学教授ワニ、ナンパした女性に拒絶された途端に態度が豹変して「何様だと思っているんだ?」「このブス!」とすごんでくるワニ、高級車に乗って「乗ってかない? 金は払うよ」と声をかけたが相手にされず「そんな服着て、誘ってんだろう!」と毒づくワニなど。

 良識ある男性読者は、衆人環視の公共の場でもこれほどのセクハラが同性により日々行われていること、そして女性たちが日常的にこのような嫌な目に遭っていることに驚くことだろう。

 しかし、取り上げられているエピソードは決して特別なことではない。会社の面接に来た若い女性を同僚たちと「品定め」する会社員ワニや、パートナーに同意を得ずにセックスを始める夫ワニなど、程度の差こそあれ多くの男性が身に覚えがある事例も多数ある。

 こうしたハラスメントや差別に向き合うための戦略や対処法も紹介する。自分は大丈夫と思っている人も、もしかしたら知らずに誰かを傷つけているかもしれない。本書を手引に改めて普段の行動を思い返してみよう。 (かもがわ出版 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  2. 2

    紗栄子にあって工藤静香にないものとは? 道休蓮vsKōki,「親の七光」モデルデビューが明暗分かれたワケ

  3. 3

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  4. 4

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  5. 5

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  1. 6

    永野芽郁×田中圭「不倫疑惑」騒動でダメージが大きいのはどっちだ?

  2. 7

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 8

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動

  4. 9

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 10

    永野芽郁がANNで“二股不倫”騒動を謝罪も、清純派イメージ崩壊危機…蒸し返される過去の奔放すぎる行状