井上理津子
著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

百年の二度寝(江古田)携帯マップでも見つからない!?雑貨屋の奥に店舗 7割新刊3割古本でコーナー作り

公開日: 更新日:

 携帯のマップが「ここ」と示すのに、見当たらない。と思いきや「百年の二度寝 オイルライフの奥にあります」との看板発見。オイルライフは、まさに楽しい品々山盛りの雑貨屋さんだ。店内を通り抜けさせてもらって到着。

 散歩や登山やサブカル系の本、はたまた「人権リテラシー」という文字が目に飛び込む本などに迎えられた。

「店名も場所もすご~くユニークですね」と思わず。

「『二度寝』はずっと好きな言葉。G・マルケスの『百年の孤独』とくっつけたんです。この場所? 絶妙のタイミングで『居抜きでどうぞ』となって」

 実は電話番号がわからず、アポなし訪問だったが、河合南さん(44)がニコニコと答えてくれる。日芸出身なので、ここ江古田に地縁。以前はジュンク堂池袋店に勤めていた。

 ミュージシャンのパートナー、新井宗彦さん(45)と2人で一昨年3月に開業。12坪に約1000冊。そんな店の輪郭に加えて、「7割新刊。3割を古本で補っている感じですねー」と教えてくれたが、それってどういうこと?

「市川房枝、北村兼子と山川菊栄の新刊が出たので並べます。とすると、伊藤野枝がなかったら寂しいから、古本で揃えて置きます、というふうに」

 なるほど、茶色い本も交ざって、往年のフェミニストたちが勢揃いするコーナーができている。

 日刊ゲンダイ読者層にハマりそうな本あります?

「はい、もちろん」

 ものの2分で、河合さんは4冊を手に戻ってきた。「自炊力」「『健康』から生活をまもる」「世の中を知る、考える、変えていく」「男尊女卑依存症社会」。各本の内容をガッツリ説明してくれるではないか。もしや全部読んでいる?

「まさかまさか。読んだふりできるのが本屋のプロですから(笑)」

 さすが、ジュンク堂で揉まれてきた人、と心の中で拍手する。1日に200冊もの新刊リストを毎日チェック。書籍取次会社が集まる「神田村」にリュックを背負って仕入れに行く、昔ながらのスタイルを貫いていると聞き、もう一度、マジで拍手した。

◆練馬区栄町40-13 オイルライフ奥/西武池袋線江古田駅北口から徒歩5分/℡090・6010・5585/月・火・水・土・日曜13~19時、木・金曜15~20時/無休

オススメの1冊

「いずれくる死にそなえない」名郷直樹著

「よく『年をとっても頑張りましょう』と言いますけど、この本は逆。都内で地域家庭医療に従事する開業医の方が、『頑張らなくていい』『健康でなくていい』とエビデンス付きで説く本です。人生はゆっくり下っていけばいいんですよと。出版社の方が持ってきてくださって読んで、私、全ページに共感したのでお薦めしています」

(生活の医療社 1980円)


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