著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

糖尿病が否定できない人の行く末

公開日: 更新日:

 糖尿病を否定できない人や糖尿病の増加について、もう少し詳細に検討してみましょう。この先のデータは国民栄養調査では手に入らないため、基の研究論文を私が間接的に紹介することになります。これまでの記事のように基になるデータや図表と私の書いたことを照らし合わせてという作業ができませんが、ご容赦ください。

 糖尿病の疑いがある、糖尿病が否定できないと言われた人は、その後一体どれくらいの人が糖尿病になるかについては、2009年に報告された日本の研究があります。この研究では平均56歳のHbA1cが6.5%未満の人を対象に、ボグリボースという薬で糖尿病がどれほど予防できるかを検討していますが、約1年後にボグリボースの治療を行わなかったグループですら881人中106人が糖尿病になったに過ぎません。ボグリボースという薬を使わなくても90%弱は糖尿病が疑われる段階にとどまっていたのです。さらにボグリボースという薬を使うと897人中50人が糖尿病になっただけです。案外糖尿病の疑いがあると言われた人の大部分は糖尿病にはならないものなのです。

 この研究結果はボグリボースという薬を使えば糖尿病へ移行する危険が半分になるというもので、早めに薬を飲んだほうがいいのではと思った方がおられるかもしれません。しかし、このボグリボースという薬は、おなかが張るなどの副作用もあり、血糖を下げる効果は示されていますが、合併症を予防する効果がはっきりしません。薬を使うのははっきりした糖尿病になってから考えればいいと思います。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」