著者のコラム一覧
神崎浩孝医学博士、薬剤師

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

核酸を安定させる技術進歩で遺伝子治療薬開発が大きく前進

公開日: 更新日:

 遺伝子治療薬が急速に発展してきた理由として、前回は「遺伝子の解析技術の向上」についてお話ししました。今回は「遺伝子治療薬を製剤化する(薬として安定で安全なものにする)技術の向上」について説明しましょう。

 まず、これは遺伝子治療薬に限った話ではないのですが、「安全」に使える薬の条件は、適切な量の薬が吸収され、必要な臓器にたどり着き、要らない分は速やかに体外に出ていくことです。加えて、薬の成分そのものが体に害がない(少ない)ことも大切です。この条件が整わない場合、副作用がひどい、あるいは効果がないという患者にとっての不利益が起こってしまいます。

 遺伝子治療薬は、主に「核酸」(DNAやRNAなど)を加工したものです。核酸は2本セットの時は安定しますが、1本では不安定という特徴があります。そして、核酸は1本になって別の核酸に結合することで機能するため、薬として効果を発揮するには1本で存在する必要があります。しかし、1本ではすぐに分解されてしまうという性質があり、薬として使うことが難しかったのです。

 それが近年、1本でも安定した核酸が開発されたことや、体内に入って2本から1本に分かれる技術が開発されたことによって、安定性の問題が解消されました。この問題解消は遺伝子治療薬の開発において大きな一歩であったといえます。

 他にも、標的臓器に薬を届け、細胞の中の核にまで薬を効率よく送達する技術の発達も遺伝子治療薬の開発促進につながっています。こうした製剤化の技術革新によって、遺伝子治療薬が実際に臨床で使われるようになってきたのです。

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