著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学元教授、医事評論家

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

【40代男性】2位は沖縄で8人に1人が肥満 なぜか血圧は低い

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 特定健診(2017年度)の結果から割り出した都道府県別不健康偏差値、早速結果を発表していこう。今回は40代男性だ。7項目の平均偏差値をもとに総合順位をつけた。

 1位は青森県だ。男性は、1960年代から平均寿命最下位を更新し続けており、日本一の短命県として名を馳せている。その事実が不健康偏差値にも見事に反映されている。不健康レーダーチャートを見ると、空腹時血糖値(125以上)、尿蛋白(2+以上)、γ‐GTP(100以上)、LDLコレステロール(180以上)でトップクラスの”優秀”な成績を収めている。BMI(30以上)の偏差値も65に近い。ただし血圧の偏差値は”物足りない”。160以上を不健康としているが、その割合は全国平均並み(偏差値50.4)にとどまっている。

 ここで注意しなければならないのは、受診者には「現在加療中」のひとも含まれているという点である。さすがにBMIを薬の力で下げることは難しいが、その他の項目は薬と生活指導によってかなり抑えることができる。筆者は痛風体質で、放っておくと血中尿酸値が10を超えてしまう。またLDLコレステロールも高く、200近くある。しかし薬を毎日飲んでいるおかげで、どちらも基準値以内に収まっている。

 つまり健診結果は、必ずしも素のままの健康状態を表しているわけではないのである。したがって健康偏差値は「県民の素の健康状態」と「各県の健康指導と医療サービス」の両方が統合されたもの、と理解しておく必要がある。

青森県のデータは「素の健康状態」に近い

 そのうえで、改めて青森県の結果を見てみよう。空腹時血糖値125以上は、糖尿病を発症している可能性が高い。だが治療を受けている人は、少ないのかもしれない。尿蛋白が2+以上は、ほとんど腎臓病だ。すぐに病院に行ったほうがいい。またLDLコレステロールが180以上あると、動脈硬化をはじめとする循環器病のリスクが高まるが、やはり青森県民は、あまり気にしていないのかもしれない。おそらく保険指導も医療サービスも、十分には受けていないのだろう。その意味で、青森県のデータは「素の健康状態」に近いと言えそうだ。

 総合2位は沖縄県。意外と思われるかもしれない。沖縄はかつて、長寿県として注目を集めていた。しかしアメリカナイズされた食生活や運動不足から、いまでは短命県の仲間入りをしつつある。レーダーチャートを見ると、とくにBMIの偏差値が”きわめて優秀”(偏差値91.9で全国1位)であることが分かる。受診者のなんと12%(8人に1人)がBMI30以上という、驚きの肥満県なのである。

 そのため血糖値や中性脂肪の偏差値も高く、泡盛のおかげかγ‐GTPの偏差値も高い。ただ血圧とLDLコレステロールはかなり低い。血圧偏差値はワースト(偏差値38.8)だ。太っていて血圧が気になる人は、沖縄県に移住するといい。体重を落とさずに、血圧だけ下げることができるかもしれない。

不健康偏差値で最下位は長野県

 総合3位は秋田県。血圧、中性脂肪、γ‐GTPの偏差値が高い。とくに血圧は全国1位。受診者の約5%が160以上という、日本一の高血圧県だ。ところがなぜか、LDLコレステロールの偏差値が低い。実は秋田県は、2013年度から「第2期 健康秋田21計画」を推進していて、とくにLDLコレステロールを下げることを重点目標のひとつとしてきた。その成果が表れてきたのだろう。

 以上は不健康偏差値の上位3県だが、では下のほうはどうか。不健康偏差値で最下位に輝いたのは長野県だ。すべての項目で偏差値が低いという完璧な”不健康劣等生”(つまり健康優等生)ぶりだ。長野県が健康長寿なのはよく知られているし、マスコミ等でたびたび取り上げられているから、とくに言うべきことはないが、岐阜県や滋賀県の偏差値が低いのは、注目に値しそうだ。

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