著者のコラム一覧
尾上泰彦「プライベートケアクリニック東京」名誉院長

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

交尾の時間が関係する?なぜ人間のペニスには骨がないのか

公開日: 更新日:

 男性のペニスは必要なときは硬く大きくなって、普段は軟らかくて小さくなるという機能的なつくりになっています。それは体の他の部位と違って、ペニスの内部には骨がないからです。どうしてなのでしょう。

 一般に、ほとんどの哺乳類のオスのペニスには「陰茎骨」という骨が存在しています。場所は亀頭内部の尿道の上付近にあり、他の骨とは連結しておらず独立しています。その大きさや形状は、同じ科目の動物でもさまざまです。たとえばチンパンジーの陰茎骨の長さは約7ミリ、ゴリラは約12ミリ、セイウチにいたっては約60センチといわれます。人間のように陰茎骨を持たない哺乳類は例外的な存在なのです。

 なぜ、哺乳類のオスに陰茎骨が存在するのか。科学的には解明されていませんが、一説では陰茎骨が性交時にペニスを支えることで、性交時間が増えるためといわれています。では、どうして人間の陰茎骨は進化の過程で消失したのでしょうか。

 2016年にロンドン大学の研究チームが科学誌に興味深い論文を発表しています。それは陰茎骨を持つ動物と持たない動物の交尾の違いを比較評価したものです。それによると、陰茎骨の役割は交尾時の長時間の挿入(3分以上)をサポートするもので、交尾時間が長い哺乳類ほど比例して陰茎骨も長くなるとしています。

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