著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

「地域連携」スタッフが在宅医療開始前の不安や悩みを解消

公開日: 更新日:

 そんな当医院で働くベテラン「地域連携」のスタッフに、仕事をする上で常日頃心掛けていることを聞いてみると、こんな回答でした。

「患者さんが病院から自宅に帰るにあたって、不安に思っていることが何かを、注意して聞くようにしています」「その患者さんやご家族の方が聞きたいことを正しく受け止め、ちゃんと答える。そして、なぜその質問をしているのかを考え、患者さんがする質問の裏に潜む不安を察知しながら、その隠れた不安も取り除けるような返答をする」――。

 ある意味、「地域連携」は、在宅医療を始める患者さんの心を事前に整える仕事といえます。そのためにも「地域連携」にあたるスタッフは、診療所で何ができて、何ができないかをはっきり理解することが大事。たとえばレントゲンだけは機材がないからできないけれど、それ以外はすべてできると言い切れる。その自信が患者さんに与える意味は大きいのです。

 ある60代後半の女性は、特発性肺線維症、慢性呼吸不全、そして肺にカビの一種がすみ着き喀血する慢性肺アスペルギルス症を患っていました。退院し、在宅医療に移行された当初は自宅で過ごす不安を抱えていたそうですが、「なんとでもなります。当院で大丈夫!」という「地域連携」の力強い態度と言葉に、「どれほど気持ちの面で安心感があったことか」と言っていました。当初は扱いにくく、使用を躊躇した人工呼吸器も、ご家族が試行錯誤し使いこなすまでになりました。

 まさに「地域連携」のやる気が患者さん側を感化したのかもしれません。夏に始まった在宅医療も、はや半年が過ぎて今でも元気に過ごしています。今年の春にはご家族と一緒に桜を楽しまれたということです。

【連載】最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず