著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

ステーキとワインで家族と忘年会…在宅だからできたこと

公開日: 更新日:

 そんな入院と在宅との間で迷われていた患者さんのご家族がいらっしゃいました。

 その患者さんは79歳の膀胱がん末期の男性。自宅はご夫婦の住まいと息子さんの仕事場を兼ねており、昼間は息子さんがいるが、夜になると夫婦2人きり。本人は病院嫌いで自宅で過ごしたいが、体調が急変すると奥さまがパニックになって救急車を呼んでしまうこともあったそうです。

 私たちの在宅医療が始まったのは、年末が近づいてきた頃。奥さまには「旦那さんの意識が朦朧とし、自分の手に負えないとなった時は、いつでも私たちに連絡してください。お正月でも構いません。すぐに対応します」と丁寧に説明し、安心してもらいました。

 新年をご家族で迎えられた元日に、頂いた言葉が印象的でした。

「聞いてください、先生」と患者さん。

「昨日はヒレステーキと赤ワインで家族で忘年会をやりましたよ。家族にお疲れさまって言ってね。ヒレステーキ半分は食べましたね。赤ワインも1杯飲んで」

 そして奥さまが、「こんなの(在宅医療)があるの知らなかった。先生は暮れもお正月もなくて大変ね。主人が帰ってきてすごく明るくなって、先生のおかげです。本当によかった」

 それから1カ月余りで、この患者さんは旅立っていきました。

 昔のように、自宅で最期の時間を過ごすことが当たり前になればよいと、切に願っています。

【連載】最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」