著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

男性と女性ではリスク因子が異なるケースがあると意識したい

公開日: 更新日:

 今年9月、男性と女性では心血管イベントのリスク因子にいくつか“違い”があるという研究が世界的医学誌「ランセット」で報告されました。カナダのマックマスター大学の医師らが、35~70歳の約15万6000例を対象にした大規模前向きコホート研究において、さまざまなリスク因子と主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞脳卒中、心不全の複合)の関連を解析したところ、男性は女性に比べて「脂質=コレステロール」と「うつ症状」で心血管疾患リスクと関連が強く、一方、女性は「食事」との関連が強かったといいます。

 もともと、心臓疾患の中には、男性と女性で発症数や症状にはっきりした差が表れているものがあります。たとえば、高齢女性では「大動脈弁狭窄症」が多く、男性は狭心症や心筋梗塞などの「冠動脈疾患」が多いことが知られています。こうした男女差は、年齢に応じたホルモンの働きや日頃の生活習慣の違いが要因と考えられているので、今回の研究で報告されたリスク因子に男女差があっても不思議ではありません。

 なぜ、男性は「脂質=コレステロール」と「うつ症状」が心血管イベントとの関連が強いのかについて、はっきりしたことはわかっていませんが、いくつか理由が考えられます。男性は20~50代はもちろん、60歳を越えても外で働いているケースが多いため、生活習慣が偏る傾向があります。昼食は外食でパパッと済ませ、夜は会合や接待で外食したり、仕事終わりに同僚と居酒屋などに飲みに行く機会も少なくないでしょう。外食は、高カロリーかつ高脂肪のメニューが多く、野菜、豆類、海藻類などがどうしても不足気味になって栄養が偏ります。そのため、コレステロール値も上がってしまうのです。コレステロールは体を正常に保つ働きがある重要な脂質ですが、悪玉といわれるLDLコレステロールが増えすぎると、血管の壁に蓄積して動脈硬化の原因になり、動脈硬化は心臓疾患や脳卒中を招く大きなリスク因子です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝