著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

精巣がんでは精子凍結保存で抗がん剤治療後の子づくりに備える

公開日: 更新日:

 このがんには、明らかなリスクがいくつかあります。その因子がある人はぜひお勧めです。

 リスクの1つは、停留精巣です。精巣は元々、胎児のお腹の中にあり、出産までに少しずつ下りてきて体の外の睾丸に収まります。3%の頻度で睾丸に入らないまま生まれてくるのが停留精巣。そうでない人に比べて3~14倍の精巣がんリスクです。もう1つは、片方に精巣がんがある人で、もう一方に発生するリスクは20倍以上。3つ目が家族歴で、親が精巣がんだと同4倍、兄弟は同8倍です。

 こうした要素があるため、丁寧な経過観察がとても重要になります。さらに細胞の種類は、セミノーマと非セミノーマに分けられ、後者は転移しやすいため、後者ならなおさらです。

 皆さん気になる睾丸摘出について。一方を切除しても、もう一方が正常なら問題ありません。爆笑問題田中裕二さんは良性の精巣腫瘍で片方を摘出しても、子宝に恵まれています。

 ただし、抗がん剤を使うと、精子形成の回復が難しい。若い男性に多いだけに、将来の子づくりに備えると、精子の凍結保存が必要になります。賢太さんも行っているかもしれません。

 男性にとっては股間がむずがゆくなるような気持ちになるかもしれませんが、がんの中ではかなり治りやすい。WBCでの兄の活躍を励みに、賢太さんも順調な経過をたどると思います。

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