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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

担当医の栄転を手放しには祝福できない…がん患者の複雑な心境

公開日: 更新日:

 Bさん(68歳・男性)は、ある病院で膵臓がん手術を受け、退院後は消化器外来に通院しています。

 この4月のことです。担当のS医師から「次回の診察は6月に予約しますが、僕は九州の方の病院に転勤することになりました。6月から担当は別の医師になります」と告げられました。

 Bさんは、「はい。そうなんですか。それはとても残念です」と、その場ではあっさり答えたものの、とてもショックでだんだん不安になってきました。

「せっかくいい先生が担当してくださって、絆が出来た、安心だと思っていたのに……。私は捨てられる。いや、そんなことではない。私には別の医師が担当してくれる。それでも、その新しい医師はどんな方なのか気になる」

 Bさんがいつも考えるのは、「治る確率の高いがんではなく、何でよりによって、私は膵臓がんなんかになったのだ」ということです。繰り返し、繰り返し、そう考えても仕方がないと分かっていても考えるのでした。

 一方では、「コロナ流行の中でも、健診に行って良かったのだ。あそこでがんが見つかったのだから、自分は幸運だったのだ。神様が助けてくれたのかもしれない」とも考えました。また、周囲からは手術を受ける前にセカンドオピニオンを勧められましたが、S医師の説明で納得がいったうえ、コロナが蔓延する中でクラスターが出ている病院もあり、あえて他の病院に行く気にはなれませんでした。

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