著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

論文世界と現実とのギャップを考える…人種より個々のばらつき

公開日: 更新日:

 今回はバングラディッシュで行われたランダム化比較試験を例に、論文世界と現実のギャップについて具体的に検討したい。

 この場合、いくつかの問題がある。決定的なのは論文の参加者と論文を元に実際の判断をする目の前の個人はそもそも別であり、ましてバングラディッシュ人と日本人は違うだろうという批判がある。海外のデータを示すと、日本人のデータでなければ意味がないと言われたりする。

 これに対してはこの連載で繰り返し述べてきたように、人種差よりも同じ人種内のばらつきの方が大きいため、人種の問題より個別の違いに注目して検討したほうが良いというのが原則である。さらに試験管や動物実験のデータよりも、とりあえず同じ人間のデータというところで妥協して、どう役立てるか考えてみるのが現実的な対応だと思う。

 どうしても日本人のデータでなければというのであれば、新たに自分で研究するか、日本人の研究結果が出るまで待つしかない。しかし、それを待つよりはとりあえずバングラディッシュの研究を基に考えてみるのもいいではないかという立場である。最善のエビデンスでなくても、現時点で手に入る限りの最良のエビデンスでまず検討するという現実的な対応である。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」