著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

意図的に環境を整備することで意思決定や行動を変えられる

公開日: 更新日:

 興味深いのは、ある雑居ビルで放置自転車問題を解決した事例です。「迷惑しています。止めないでください」と書いてあった張り紙を、「ここは自転車捨て場です。ご自由にお持ちください」という張り紙に変更したところ、放置する人が激減したといいます。これは、「放置すれば他人に自転車を取られてしまう」という意識を喚起し、「デメリットを被る」というナッジ理論を活用したたまものです。このようにナッジは、意図的に環境を整備することで、人間の意思決定や行動をより良い方向へと導き、社会的課題を解決できるとも期待されています。

 一方で、人間の意思決定や行動が環境に簡単に左右される性質を持つことを考えると、「コントロールすることも可能なのでは?」と思う方もいると思います。

 オーストラリアのラトローブ大学のマクグラスの研究(23年)では、スーパーを舞台にショッピングカートの底に「当店で10人中9人のお客さまが野菜や果物を購入します」というメッセージを記載することで、野菜や果物の売り上げを増加させることに成功したといいます。たしかに、野菜不足の方にとっては、健康促進につながるかもしれません。しかし、そう思わせてしまう意識を喚起している以上、個人の自律を阻害する可能性を持つ操作的な行為──と言われても仕方がないことかもしれません。

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