認知症患者の不安に寄り添う「バリデーション」とは?

公開日: 更新日:

 アルツハイマー型認知症になると、自分の思いをうまく言葉で伝えられず、周囲との意思疎通が難しくなるケースが少なくありません。そういった認知症の方とコミュニケーションを取る方法に「バリデーション」があります。これは、傾聴、受容、共感を基本的な姿勢とするもので、1963年にアメリカのソーシャルワーカーであるナオミ・ファイル氏によって考案されました。

 認知症の方の中には、過去のトラウマ的な「心に残った傷」を過去の出来事として清算できている方もいれば、亡くなるまでずっと解決できずに奮闘している方もいらっしゃいます。とりわけ、長い人生で多くの「大切な方との別れ」を経験してきた高齢者は、その大切な方に対する後悔が心に残ったままになっていることも少なくありません。

 バリデーションでは、コミュニケーションを通して本人が抱える苦しみに共感を示し分かち合い、やがて訪れる死が安らかなものとなるようにその方の不安に寄り添います。

 コミュニケーションを取る際に重要なのが「介護者の都合」で相手を変化させようとせず、誠実に寄り添うことです。たとえば、認知症の方が「(すでに亡くなっている)お母さんに会いに家に帰りたい」と訴えた場合、介護者の方は気持ちを落ち着かせようとして、つい「お迎えの車が来るからお茶を飲んで待ちましょう」と、その場しのぎのウソをついてしまいがちです。しかし、認知症の方は、親がすでに亡くなっているのをどこか心の奥深くで認識していて、もう会えなくなってしまったお母さんの愛情を求めた結果、「会いたい」という言動につながっているのかもしれません。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する