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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

「肺腺がん」はステージ3でも根治の可能性がある

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 たばこを吸わない人や女性に多く、肺がん全体のほぼ半数が肺腺がんですから、非喫煙者や女性も肺がん対策としてX線検査が重要です。もちろん、たばこの影響はあって、特に受動喫煙の影響が強く、夫が喫煙者の場合、非喫煙者の妻が肺腺がんになるリスクは2倍になります。

 肺腺がんは、早期なら手術と定位放射線の治療成績は同等で完治が期待できます。定位放射線とは、正常組織への照射を極力避けながら腫瘍に選択的に照射するピンポイント照射のことです。

 一方、遠隔臓器への転移はないものの、局所で大きく進行した肺がん、非小細胞肺がんのステージ3や小細胞肺がんの限局型は、三上さんのように抗がん剤と放射線を組み合わせる化学放射線療法が適応です。大体3割くらいは、化学放射線療法で治癒の可能性があります。

 肺がんでは、EGFRという遺伝子に変異があるかどうかも重要で、変異があれば、EGFR阻害剤が効果的です。このタイプだと、化学放射線療法にEGFR阻害剤を組み合わせれば、転移があっても、5年以上生存できる可能性が高くなります。

 日本人は、非小細胞肺がんのうち30~40%がEGFR遺伝子変異陽性です。男性より女性、たばこを吸う人より吸わない人に多く、肺腺がんの患者背景と重なりやすいため、進行肺腺がんは治療の望みを捨ててはいけません。

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