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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

旅は「プラン」から「振り返り」までがワンセット…脳への刺激になる

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一筋縄ではいかないことがまた楽しい。生み出す能力が前頭葉活性

 今は主夫・主婦どちらもいる時代ですが、認知症リスクの高い65歳以上では、家事を担っているのはほぼ女性(主婦)だと思います。主婦の場合、会社勤めのように定年退職がありません。その大変さは、家事を担っていないものの想像をはるかに超えると思います。しかし、脳の活性化という面からすると、非常に利点が多いのです。

 これまでにも述べていることですが、家事の中でも料理は最高に複雑な作業で、脳にさまざまな刺激を与えます。献立を決める、材料を揃える、時間配分を考え同時進行でいくつかの作業をこなす、作りつつ片付けをし、食べ終わった後は洗い物をし、食器を拭き、元の位置に戻す。料理には買い物が伴います。スーパーまで出かけ、家にあるものないものを思い出し、値段を過去のものと比較し、買う・買わないを選別する。

 毎日自炊となると料理は1日3回×365日、買い物は週に数回を1年間、これだけの回数をこなすのですから、主婦は、そうではない方に比べて日常生活が認知症対策になっていると言えます。

 定年退職をして、その後は仕事もしておらず趣味もない、食事は毎日お総菜やお弁当を買ってくるか外食か、という方は、認知症対策でだいぶ後れをとっていると思ったほうがいいかもしれません。

 ちょっとでもいいですから気になることを見つけ、トライしてみてほしい。私自身、いちばんやりがいを感じているのは仕事です。現在もアルツクリニック院長として仕事を続けていることに幸せを感じています。

 しかし一方で、仕事以外の別の楽しみも見つけたいと、気になることへのチャレンジを続けています。

 まずはバラの挿し木。これが難しく、なかなかうまくいかないんですが、その分、きれいなバラが咲いた時のうれしさはなんとも言えない。最近はみかんやレモンなどの種をプランターに植えることにも楽しみを感じています。毎日水をやっていると1カ月くらいで芽が出てくる。これが可愛いんです。

 ある食事屋さんでだし巻き卵を食べた時、これがすごくおいしくて、YouTubeで早速作り方を調べました。

 だし巻き卵は和食の王道らしく、かなり困難。卵をだいぶ無駄にしましたが、今では理想に近いものを作れるようになりました。出張先のホテルで食べたオムレツも、再現を試みた料理です。

 一筋縄ではうまくいかないことがまた楽しい。うまくいかせるにはどうすればいいのか、と考えるからです。

 生み出す能力は、脳の中でも特に前頭葉活性につながります。みなさんもぜひ。

【連載】第一人者が教える 認知症のすべて

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