(2)真面目な人ほど、“チャレンジ”が止まらなくなる
山下院長の患者の中には、「事件のことを忘れないように、留置された警察署の写真を自宅に貼る」「毎日、被害者に渡した手紙のコピーを読む」といった自制行動を心掛けた人も少なくないそうだ。だが、その大半は「繰り返し見ていたがために再発した」という。
「依存症は、①『やめたい自分』は知識と理解で高めていく②『やりたい自分』は環境で抑えたままにする──この両備えがないと治りません。『やめたい』を高めるためには、依存症という病気の知識と、理解の解像度を上げること。当人が、医療機関などを通じて病態を徹底して学ぶしかない」
では、「やりたい自分」を環境で抑えるとはどういうことか?
「依存症の治療は、『渇望に負けない自分をつくる』ではなく、『問題行動ができない環境をまずは1年間つくること』です。変えるのは自分ではなく環境」
これこそが初めの一歩と話す。