感覚器と心臓(4)「老人性難聴」は心臓を害して寿命を縮める
■進化する補聴器を有効活用したい
ただ、老人性難聴は根本的な治療法がありません。重度難聴の場合に検討される人工内耳手術は一般的ではありませんし、難聴を改善したり聞こえをよくする薬も見当たりません。当帰芍薬散という漢方薬には、体内の血液や水分の循環を改善してむくみをとる働きがあって結果的に難聴の改善に良いという声があり、これを主成分にしたサプリメントも販売されています。ただ、医学的に確かなエビデンスはなく、万人に効果があるとはいえません。
むくみをとるという点では、西洋薬にも利尿剤がありますが、利尿剤には難聴を進行させるという副作用が報告されているので、逆効果になる可能性があります。やはり、難聴を改善させる薬はないのが現状なのです。
となると、外部デバイスの「補聴器」を使うのが最も確実で有効な難聴の改善策といえます。
近年、補聴器はどんどん進化を遂げています。1990年代に登場したデジタル補聴器を皮切りに、現在はAIを搭載し、声をより聞こえやすくしたり、人の声と雑音を分離する機能、周囲の音環境を分析して特定の方向から来る音だけを拾う機能など、多岐にわたる機能を持つタイプが登場しています。充電性能もアップして長時間でも問題なく使用できるようになり、耳かけ型や耳穴型など見た目を重視したデザインの機種も増えています。