「幸せ」を強く求める人ほど幸せになれない
その後、フィギュアスケーターが金メダルを獲得する──幸福な感情を喚起させるような2分間の映像と、悲しいカップルの話──悲しい感情を喚起させる2分間の映像をそれぞれ視聴させたところ、幸福を重視するよう誘導された被験者は、幸福な感情が誘導される状況において、幸福感を感じにくいことが明らかになったといいます。つまり、幸せを強く意識すると、かえって幸せを感じづらくなるということが示唆されたのです。
このような研究は多岐にわたって行われており、例えば 都内の大学生157人を対象に行った立教大学の川久保らの研究(2016年)でも、幸福を強く求める人ほど、孤独感による幸福感の低下が大きく、ポジティブな出来事の影響が小さいことが示されています。
先の研究では、期待するほど幸福ではないと感じた場合、反比例するように失望感を抱きやすくなるともうたっています。皮肉なことに、幸せを過度に重視することは、かえってポジティブな感情の経験を減少させる可能性があり、落ち込みやすくなってしまうのです。
私たちは、幸福を最大化しようとあれこれ考え、ネガティブな感情を「悪いもの」として排除しようとします。