医師が告げる「診断名」は祝詞と同じか…臨床現場は「漢字」に助けられている
心臓がひょっとしたら困っているかも知れないことは否定できないので、「冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症という可能性も否定できないのですが、『心筋虚血』ということも……」などと、お伝えすることも可能でしょう。
臨床現場は漢字で大いに助けられます。中華文明に感謝です!
人間のカラダは複雑で不思議なものなので、ズバリ、一言で説明できないこともままあります。そうした時、患者さんをけむに巻こうとするつもりはなくとも、あいまいで大ざっぱな説明でも、漢字のおかげでご納得いただけるのです。
患者さんは納得しているのではなく、お医者さまに「祝詞」をあげてもらい、お坊さんから戒名を頂くがごとくに、ありがたく漢字の「診断名」を拝領して満足して帰る、という構造なのかも知れません。
これぞまさにスコラ哲学のアベラールの「唯名論」です。
「人間は目の前の現象に勝手に名前を付けて概念化して普遍性を見つけたつもりで理解したと考えているだけだぞ」といった「科学」に対する批判的な考え方です。