脳出血で麻痺が残る60代女性の希望は「自分好みのコーヒーを入れて飲みたい」だった
例えば、脳出血で片側麻痺が残る60代の患者さんがいらっしゃいました。私たちの診察時には常に緊張されており、質問にも淡々と短く答える印象でした。
ところが、訪問看護師さんの報告書には、「利用者さんの希望(したいこと、できるようになりたいこと)」として、「自分の好きなタイミングでリンゴを切って食べたい」「自分好みのコーヒーを入れて飲みたい」と、意外にも具体的で生き生きとした希望が記されていたのです。
さらにこの患者さんは、リハビリにも意欲的に取り組まれており、週に2回ほどは台所のシンクで皿洗いができるまでに回復されていました。
リハビリの中では、冷たい飲み物の準備やリンゴのカット、おかずを電子レンジで温めて配膳するなど、生活動作に関する具体的な指導も行われ、できることが少しずつ増えていったとの報告がありました。
しかし、私たちが診察時に「リハビリはされていますか?」とお尋ねしても、「時々ね……」といったそっけない返答で終わってしまうことが多かったため、このような訪問看護師さんからの報告は、私たちにとってはある種の驚きであり、非常に価値ある情報となったのです。
この情報をきっかけに、私たちはこれまでの診療内容を細かく見直し、より適切なケアへとつなげることができました。さらに、患者さんとの距離も以前よりぐっと縮まり、より親密なコミュニケーションが取れるようになったのです。