要介護5の75歳男性患者…自宅に帰って、尿道バルーンを外せた!
「先週、尿道バルーンを抜くことができたんです! だから本当にうれしくて」
尿道バルーンを外せたことも、自宅療養を決める大きな理由の一つだったのです。
尿道バルーン(膀胱留置カテーテル)は、尿排出路を確保するために膀胱まで管を通し、そこから尿を蓄尿袋へ排出させる仕組みです。術後管理や排尿障害・膀胱萎縮などに使われ、蓄尿袋は持ち運びできるケースや足に装着する小型タイプもあり、外見上は目立ちません。入浴も可能ですが、2~4週間ごとに交換が必要であり、感染のリスクや日常生活の不便さから、どうしてもQOL(生活の質)が下がってしまいます。
そのため在宅医療では、患者さんの快適さやご家族の負担を考慮し、可能な限りバルーン留置は避けるようにしています。
病院で入院した患者さんは、このバルーンのように、合理性と万全の療養管理の名のもとに、医療機器や薬剤の処方などを十分に使用する、いわば「足し算」の療養を行うことを心掛けています。
在宅医療では、その逆に、常に患者さんやご家族の負担軽減と療養効果とをてんびんにかけながら総合的に判断し、できるだけ医療機材を使わず、投薬も減らす「引き算」の療養を行っています。
奥さまの「外せた喜び」の言葉は、そんな在宅医療の「引き算」の方法がいかに患者さんとご家族の生活に寄り添う医療に合致しているかを、改めて実感させてくれるものでした。