著者のコラム一覧
高橋邦尚ゆとりが丘クリニック 院長

1952年岩手県生まれ。岩手医科大卒業後、県立磐井病院、岩手医科大病院、都立駒込病院に勤務。米国のジョンズ・ホプキンズ大に留学。岩手県立中央病院放射線科医長を経て、1999年に岩手県滝沢市に「ゆとりが丘クリニック」を開院した。

(4)言葉の上すべり…患者は「言葉」より「適切な処置」を求めている

公開日: 更新日:

 そういえば、私の高校の教師は常々「世の中に絶対というものなどない。そんなものにだまされるな!」と言っていた。

 いつの世にも絶対などはなくわれわれは両極端から中間までの入り交じったグレーの中で、生の生活をしている。医療だって100%の科学であるわけではなく、人間と社会のはざまでもがきながら、なんとも曖昧な作業を行っているに過ぎない。

「患者さんの身に寄り添う」という言葉に戻ろう。医者が患者に100%寄り添うなんてことはできない。医療人である以上、常に寄り添いたいという気持ちはある。でも、われわれがそれを口にした瞬間、言葉は上すべりして宙に浮き、時と場合によっては患者さんに大きなため息をつかせることになる。

 在宅で筋ジストロフィーの患者さんを診ていたことがある。お付き合いの時間が長くなり、それなりの信頼関係が出来つつあるかな、と思った頃、その患者さんに「言葉よりも、呼吸器のネブライザーの角度を私の思う通りのところにセッティングして欲しい」と訴えられ、ハッとした。自分の思う通りの体の動きが出来ない患者さんにとって周辺医療機器の微妙な設定、調整は生活環境のみならず、生きることに直結する。患者さんが何よりも求めているのは適切な判断と必要な医療技術である。その希望が満たされないことを敏感に感じとった時に、患者さんは医師の質問に「特に変わりはありません」などと答える。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった