(4)言葉の上すべり…患者は「言葉」より「適切な処置」を求めている
過日、岩手県滝沢市で行われた医療懇話会。私が勝手に敬愛している先生が登場した。鳥取の在宅医として全国でご活躍の徳永進先生である。地方のホスピスの院長として活躍される一方で、その体験をエッセーにも書かれている。先生はこうおっしゃった。
「“患者さんの気持ちに寄り添う”“患者さんの声にじっと耳を傾ける”。どっちも言葉としては奇麗だが、何か言葉が上すべりしているように思える」
私も常々同じようなことを考えていたがモヤモヤしていた。徳永先生のお話を聞いて初めてストンと腑に落ちた。
医療に関する事柄のみならず、私が怪しいと思っている言葉やセリフはいずれも耳あたりが良く、しかも正論であることが共通している。政治家の言う「しっかりと検討して」(たぶん何もしない)、「国民の声に耳を傾けて」(たぶん無視されてる)などがその例であり、いずれも正論の羅列である。「環境にやさしい」「未来の子どもたちのために」「誰ひとり取り残さない……」というフレーズもまたしかりである。
「必ず」「絶対」という言葉も怪しいし、うさんくさい。「私に悪いところがあったらはっきり言ってください。必ず直しますから」と言って、態度が改まった人を見たことがないし、「絶対悪いようにはしないから……」と言われて酷い目にあった人を何人も知っている。