(4)暗い部屋での6~7時間の睡眠が抗利尿ホルモンの働きを低下させる
臨床試験の結果、セルフケアを実施したグループB(水分摂取)とD(睡眠)は、飲み薬のみのグループAよりも統計学的に有意にめまいが改善しました。さらに、グループC(飲み薬+中耳加圧療法)と同等の改善効果も確認され、セルフケアの重要性が浮き彫りになりました。
また、グループB~Dは、ストレスホルモンのひとつである抗利尿ホルモンの働きも下がっていました。抗利尿ホルモンは尿を出すのを抑制するホルモンですので、「抗利尿ホルモンの働きが下がる」ということは「排尿が良くなる」、つまり「体内に水がため込まれにくくなる」ということです。
メニエール病の発症に関連するストレスは、万人に必ず効く対策というものがありません。しかし、研究では、積極的な水分摂取と、部屋を暗くし睡眠環境を整えた状態で眠ることが抗利尿ホルモン(ストレスホルモン)の働きを下げるという結果が出ていますので、やらない手はありません。
メニエール病の患者さんは悪天候時にめまい症状に苦しむことが指摘されており、私たちの研究でも「気圧が下がるとメニエール病の方は内耳の水ぶくれがひどくなる」ということが証明されています。10月はまだ台風の季節です。セルフケアでメニエール病対策に取り組んでください。 =おわり
(奈良県立医科大学付属病院めまいセンター長/同大耳鼻咽喉・頭頸部外科学教授、北原糺医師)