著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

(1)「やる気」の正体…意志の弱さか、脳のバグか

公開日: 更新日:

■「いい子」が危ない脳科学的理由

 一方、大人の顔色ばかりをうかがう「いい子」は、自らの本音の感情を押し殺したり、いじめ被害の中で孤立して一人で悩み続けやすい。そのような状況では、脳内システムもうまく働かない。学校に行く意欲を失うだけでなく、傷つくことを過度に恐れ、自室にひきこもる生活に陥ることにもつながる。

 そもそも思春期の脳は、恥ずかしさや怖さといった感情が強く生じやすく、仲間からの評価や失敗体験に大きく揺さぶられやすい。

 一方で、前頭葉は発達途上にあり、出来事を客観的に分析したり、感情を切り替える力は十分ではない。そのため思春期では、周囲から見れば小さな出来事でも、本人には大きな痛みやプレッシャーとして感じられる。「気にしすぎ」なのではなく、そう感じやすい脳の時期なのである。

 不登校にみられる「朝起きられない」「無気力」には、崩れやすい睡眠習慣や不安定な体内時計、未熟な自律神経機能の影響も無視できない。やる気は脳と体、そして人間関係の問題に帰着する。だから、本人の本音や苦しさを十分にくみ取らずに、根性論や見当違いの助言を重ねることは、脳や体の働きに反することを本人に強いることに他ならず、さらに追い詰めかねない。

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