長寿研究のいまを知る 番外編(5)「老化」は治療できるのか
「つまり老化とは、DNA損傷の蓄積だけでなく、こうしたエピジェネティクスによる制御の乱れによって、遺伝子発現パターンが変化していく現象ではないか、と考えられているのです。部分的リプログラミングはこれを若い状態に戻す研究です」
この仮説に衝撃を与えたのが、2020年に発表された視神経研究だった。老化したマウスに山中因子の一部を短期間作用させると、傷ついた視神経が再生し、視力まで回復した。さらにDNAメチル化年齢も若返っていた。少なくとも一部の老化現象は可逆的である可能性を示した。
現在、この部分的リプログラミング研究は視神経だけでなく、筋肉、肝臓、皮膚、免疫、脳へ広がっている。アルツハイマー病や筋力低下、加齢性難聴などへの応用も視野に入る。単なる寿命延長ではなく、「健康寿命をどう延ばすか」へ焦点が移っている。
さらに最近は、遺伝子導入だけに頼らない研究も急速に進む。薬剤や化合物を用いて、細胞を若返らせる「化学的リプログラミング」である。もし飲み薬レベルで老化制御可能になれば、長寿医療は一気に現実味を帯びる。


















