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荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

PM2.5は心筋梗塞のリスクを高める…地道な対策の積み重ねが大切

公開日: 更新日:

「PM2.5」は、大気中に浮遊する粒径が2.5マイクロメートル以下の非常に細かい粒子で、大気汚染や健康影響の重要な指標として扱われています。

 最近、欧州心臓病学会誌に掲載された研究で、日本の大規模データを用いて、PM2.5と心筋梗塞の関係が解析されていました。この中でPM2.5への短期暴露は心筋梗塞のリスクを明らかに高めることが確認されました。特に、冠動脈に明らかな詰まりがないタイプの心筋梗塞で強い関連が見られたのが特徴です。

 興味深いことに、新型コロナウイルス流行後には、PM2.5による心筋梗塞リスクが低下していたことも報告されています。背景として考えられているのが、マスク着用や外出機会の減少などの行動変容です。

 PM2.5は体内で炎症や血管障害を引き起こし、血栓の形成を促進します。これは高血圧や動脈硬化と同じく、徐々に進行する「静かな血管ダメージ」といえるでしょう。大気汚染は誰もが避けがたいリスクでありながら、自覚症状がほとんどない点が厄介です。

 では、「マスクをすれば安心か」といわれれば、それも違います。たしかに一定の防御効果は期待できますが、それだけでリスクをゼロにはできません。心血管リスクは“足し算”で増えていきます。大気汚染に加え、喫煙、高血圧、糖尿病、運動不足……これらが重なるほど危険性は高まります。だからこそ、血圧管理や生活習慣の改善、必要に応じたマスク着用など、できることをひとつずつ実践することが大切です。

 こうした地道な取り組みの積み重ねが、結果的に心臓を守ります。「環境の問題だから仕方ない」と片付けるのは簡単ですが、防げるリスクは意外と身近にあります。そのことを意識する姿勢こそ、これからの予防医療においていっそう重要になるでしょう。

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