著者のコラム一覧
南渕明宏昭和医科大教授

心臓血管外科専門医、医学博士。

週に1度の「回診」で急性大動脈解離の患者さんに話したこと

公開日: 更新日:

 患者さんはしばらく間をおいて、表情は笑顔に変わりました。

「わかりました」とのご納得のお返事を頂戴したのです。その場に居合わせた全員のツボにもはまったようです。

 こういった回診は、私のような年長者が若い医師たちを引き連れて患者のご機嫌伺いをする「イベント」ですが、患者さんとのやりとり、その一顰一笑のリアクションを若い医師たちは観察しています。医者の患者に対する接し方は医師の業務の要諦です。これは「コミュニケーション能力」といったうすっぺらいものではありません。

 死を意識している患者と、サッカーのワールドカップの結果を気にしている医師とは全く立場が違います。患者と医者は普段使っている言葉も違います。医者の、あるいは患者の、言いたいことが相手にしっかり伝わるはずなどありません。齟齬、誤解、偏見、幻想、聞き違いは日常茶飯事です。言葉ではない、人間同士の「心の奥底」の感情が通じ合えるか通じ合えないか、これできまります。これが医者ショーバイの本質です。

 さて、ところで、今回の患者さんとのやりとりは、まるで禅僧の「法論」じゃないか、と感じた人もいることでしょう。「法論」とは「そもさん!」「せっぱ!」で禅僧同士が対決するあれです。

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