1965年発売の銘菓「源氏パイ」は“源義経”が命名のヒント
愛らしいハート形でおなじみのパイ菓子「源氏パイ」は、1965年生まれのロングセラー商品だ。おやつやお茶うけの定番としてファミリー層を中心に絶大な支持を得ながら、近年はひと口サイズの「ミニ源氏パイ」やチョコ味など、若い世代を意識したシリーズ展開も好評。発売から50年経ったいまも売り上げを伸ばしている。
製造販売するのは静岡の老舗菓子メーカー、三立製菓。同社は63年に日本で初めてパイ菓子の量産化に成功。改良を重ね、65年に発売したのが「源氏パイ」である。そもそもなぜパイ菓子なのか。きっかけはパイの本場ヨーロッパ。当時の開発担当者が現地を視察中に「パルミエ」と呼ばれるハート形のパイ菓子に出合い、「この菓子を日本でも手ごろな価格で味わってもらえるようにしたい」と考えたのが始まりだ。もっとも、本来は高級菓子である。開発は苦労の連続だった。
「パイは『生地をのばして、折り重ねて』を繰り返すことで層をつくるが、生地が切れないようにのばすのはとても難しい。しかもハート形という形状。これは型抜きではなく、折り重ねた何層もの生地が、オーブンで焼くことで自然に広がってできるものだけに、キレイなハート形に仕上げるのは至難の業で、当時は手作業でなければ不可能とされていたほど」(企画開発部の小林麻美子氏)