柳亭こみちさん<5>人生の醍醐味は人と触れ合うこと
会社を辞めて落語家になる――。そんな娘の話を、教師だった母親はすんなり受け入れた。
「母親は、父親が俳優(名脇役で知られた谷晃さん)でしたし、本人も学校行事になると頑張るタイプだったので、『愛(本名)らしい生き方ができるね』と喜んでくれました。ただ、大学の職員をしていた父親は、『人前で笑われることの何が楽しいのか、お父さんはさっぱり分からない』と。新潟の田舎に生まれて、地道に生きてきた人ですから、『気でもふれたのか』と驚かれました」
入門のハードルも高かった。師匠となる柳亭燕路さんからは、「ボクは、落語は男がやるもんだと考えている最たる人間です」と言われた。それでもこみちさんはめげなかった。0歳のころから現在まで、自分はどのように生きてきたかをまとめ、手紙にしたためて、「弟子にしてください」と頭を下げ続けた。