肉のワンダーランド「又三郎」で食べる和牛熟成肉の完成度
オーナー、荒井世津子さんの愛が満ちあふれた肉のワンダーランド、又三郎。
思春期に母を、社会に出て間もなくして父を亡くし、兄とともにまったくの素人として1989年に大阪・長居公園の近くで「本格炭火焼肉専門店 又三郎」は船出した。ところが、創業から半年で兄もこの世を去り、世津子さんは独りで航海を続けなければならないことに。10年ほどはいつ潰れてもおかしくない状態だったという。
転機は2005年、ニューヨークでドライエイジングビーフ(熟成肉)を食べて目からウロコが落ちた。時間をかけてグリルされた厚切りの肉はその脂、芳醇な香りが自分の扱ってきたものとはまったく違っていた。
和牛で熟成をやってみよう。独自の研究・試作を重ねて完成度を高めていった。徐々に評判は広がり、現在では他府県や海外からもお客さんがやってくるようになった。
土佐褐毛牛と黒毛和牛の中から熟成に堪え得るポテンシャルが高い肉のみを独自の熟成庫で2~8週間ゆっくりと寝かせる。温度、湿度とかすかな風。肉の表面は黒く変色してカビが生えてくるが、そのカビは芳醇な香りを放ち、肉の内面では酵素がタンパク質を分解しアミノ酸に変えていく。熟成されることによりアミノ酸の量が約4~10倍になり、肉本来のおいしさが最大限に引き出されるのだ。肉の乾燥し変色した部分を取り除くと、鮮やかなロゼ色の肉の立方体となる。