35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方
ランドマークは「撤去もやむを得ない」
塔の内部を知る関係者によると「建物自体の耐震性に問題はないが、中は雨漏りがひどく、エレベーターも動かない状態」だという。改修しても、解体しても、いずれにせよ莫大な費用がかかる。
もはや「負の遺産」になりつつある。市が19年に策定した「鶴見緑地再生・魅力向上計画」には、いのちの塔は今後の有効活用を検討したうえで「撤去もやむを得ない」とある。市は現在も、今後の方針を検討している。
公園の北側には、花博開催期間中の雰囲気が最も色濃く残されている「国際庭園」エリアがある。各国が独自の文化様式で制作した庭園を出展したもので、60の庭園が残存している。
しかし、こちらも廃虚同然になっている建造物がちらほら。エリア全体の人通りも少ない。
中でも、中国庭園は劣化が深刻だ。蘇州の水郷をモデルにしたこの庭園は、すべての素材が中国から搬入されたこだわりっぷり。会期中は民族楽器の演奏や、民族舞踊なども披露された。
しかし今では、そのにぎやかさは見る影もない。建物内部は閉鎖され、瓦屋根は部分的にひび割れて欠けている。建物の木材も、一部がボロボロに。公園の管理者によると「内部は老朽化が激しく、来園者に開放できるような状態ではない」という。
市の担当者は、今後の国際庭園の整備計画について「全体のうち39の庭園は、撤去や規模の縮小を進める方針だ」と話す。
現地を訪れてわかったのは、レガシーを残す難しさだ。ただでさえ、大阪・関西万博には国から巨費が投じられている。そのレガシー計画が成果を上げるまで、「成功」とするのは早計だろう。
(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)


















