(19)真冬の蕎麦屋酒
メニューを見ていて、アッと声が出そうになったのは、カラスミがあったからだ。寒い季節、あん肝、白子などの文字を見ると、そわそわして、落ち着かなくなる。とても素通りはできない、と思ってしまう。
馴染みの寿司屋では、生ガキから始まって、炙った白子にあん肝ポン酢と立て続けに頼み、飲むは日本酒。冷酒のこともあれば、燗酒のこともあるのだが、そこにカラスミがあったなら、さらに飲むほうに意識は集中していき、にぎりはおろか、つまみの刺身も頼まないこともある。そんな日々を送っていた頃のことだから、カラスミという文字を見た途端に、条件反射でアッと声を出しそうになったのだ。
カラスミには店ごとの味わいがある。その違いも楽しいので、いろいろな店で頼むのだが、この日、蕎麦屋で食べたカラスミも絶品だった。薄く切ったダイコンの短冊にカラスミをひときれのせ、さらにカイワレをのせて口へ運ぶ。酒の銘柄は覚えていないが、小さな徳利1本で済むはずもなく、2本、3本と飲んだ。そのうちに、腹の底から温まってくる。手足の先などまだ冷たいはずなのだが、心は湯にでも使った気分だ。















