(22)「先は長くないから好きにさせて」…返す言葉がなかった

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「家に帰りたい。長い間留守にしているので心配で心配で」

 予想通り、おかんの心の中は家のことでいっぱいだった。

 さすがにこれを拒否することはできない。けれど、連れて行ったら「病院に戻らない」と言い出すかもしれない。ショートステイ入居時の鬼気迫る抵抗を思い出してしまい、「病院の決まりで泊まることはできないよ。夕方には戻るからね」。

 しつこく念押しをすると、おかんは悲しい顔で「もう先は長くないんだから、好きにさせてよ」。

 恨み節のように呟く。返す言葉が出てこない。楽しく話をしたいのにできないもどかしさに、心の中でため息をついてしまう。

 それでも、せっかくの外出なのだからしっかりと準備を整えておきたい。兄と相談し、数日後に控えたおかんの誕生日に外出すると担当看護師に伝えたところ、「当日は少し早めに来て、介助の練習をしておきましょう」との提案があった。

 外出当日、早めに病院に行くとおかんに付き添うようにして理学療法士と作業療法士の2人が待っていた。そして基本的な歩行時の補助に始まり、階段の上り下りやトイレに座らせる時のコツを教えてもらったのだが、実際におかんを支えながらやってみるとプロと素人の差は歴然。焦らずにゆっくりやることが大切だと悟った。

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